近年、AI(人工知能)の急速な進化により、ビジネスの現場での活用が注目を集めています。
自動化やデータ分析、チャットボットのような顧客対応まで、AIは多くの企業で導入が進み、その可能性は無限大だと思われがちです。
確かに、生成AIの活用について周りと話をしていても、
「これくらいやってくれたらいいのに・・・」といった意見もちらほらと聞こえ、
「自動化」=人間の作業が完全に不要になる。
というような印象を持たれてる方が多い気がしますね。
ですが、現実的には、AIは何でもできるわけではありません。AIはまだ進化の途中であり、得意分野もあれば、苦手な分野も存在します。
AIを正しく理解し、適切に導入することで企業は大きな成果を得るのに優位にはなりますが、そのためにはまずAIの限界や現状の精度を把握することが不可欠です。
そこで、今回はAIが今どのような状況にあるのかについて探ってゆきたいと思います!
本記事では、AIの限界と現在の可能性について、どのようにAIを活用すべきかを考察し、企業がAIを効果的に活用するためのポイントを探ります。
この記事では、AIの精度や限界について、実際の課題や苦手分野をポイントでまとめ、わかりやすく解説します。
また、現実のビジネスや生活でAIを活用する際にどのような点に注意すべきかについても触れています。
AIの可能性を正しく理解し、その課題と付き合いながら実用化を目指す皆様にとって、有益な参考情報となれば幸いです。
AI技術の基礎を理解する
AIとは何か?
人工知能(AI)は、データから学習し、意思決定を行う技術です。
人間の知能を模倣し、複雑な問題を解決したり、新しい知識や能力を獲得したりすることを目指しています。
AIは、近年急速に発展しており、私たちの生活や社会に大きな影響を与え始めています。
近年ではこれらの技術を応用したAIエージェントも有名になってきていますね。AIエージェントについてはこちらの記事でわかりやすく紹介しているので、まだご覧になられていない方はご確認くださいね。
AIの性能評価基準
AI技術がいかに高度であっても、目的に応じてその性能を正しく評価することが重要です。
AIの性能評価は、使用される目的や用途によって異なりますが、一般的に以下の4つの基準がよく使用されます。
AIを構成する技術と課題
AIはさまざまな技術から構成されており、それぞれが特定の目的や用途に応じた強みと課題を持っています。
ここでは、主要な技術のうち3つ例をとり現状を説明しつつ、その後、AIの性能についてご一緒に見て行ければと思います。
機械学習(Machine Learning)
機械学習は、多くの方が耳にしたことがある技術ではないでしょうか。顧客の購買予測や異常検知などで活用されており、データから学習して新しいデータを予測・分類します。実際のデータが多いほど、モデルの精度が向上するため、多くの業界で広く使われています。
この機械学習には、サポートベクターマシン(SVM)というアルゴリズムが関与しています。SVMは線形的なデータの分類に適していますが、非線形問題や大規模データでは計算コストが高く、リアルタイム処理には不向きな場合もあります。これに対処するために、今では転移学習という技術が注目されています。転移学習では、あるタスクで得た知識を別のタスクに応用することで、少ないデータでも高い精度が期待できるためです。
ただし、関連性の低いタスクでは精度が低下するリスクも伴うため、この技術を用いて構築する場合には注意が必要です。
深層学習(Deep Learning)
深層学習は、機械学習の一種で、特に画像認識、音声認識、自然言語処理などの分野で高い成果を上げています。多層のニューラルネットワークを使い、複雑なデータを処理しますが、その分、大量のデータと計算リソースを必要とし、ブラックボックス化するという課題があります。
近年生成AIは私たちの身近なものになっていますが、その大きな課題として、実在しないものをあたかも事実であるかのように情報を出力してしまう『ハルシネーション』がありますよね。ハルシネーションの原因がいまだに解明されておらず、それは起こりうるものとしてAIエージェントを活用してゆかないといけないとされていますが、まさしくこのブラックボックス化が原因究明を困難にしている要因の一つであると言えます。
この課題に対応するため、XAI(Explainable AI:解釈可能なAI)という、その名の通りなぜAIがその出力を行ったのかというプロセスを解釈できるように可視化させる技術が活用されていますが、やはりまだ完全ではなく、現在も研究が進められています。
強化学習(Reinforcement Learning)
強化学習は、エージェントが環境と相互作用し、報酬を最大化するための行動を学習する技術です。
自動運転やロボティクス、ゲームAIで広く使用され、GoogleのAlphaGoがプロ囲碁プレイヤーに勝利したことで注目されました。
AIに「思考」はありません。そして、生まれた時からの経験の蓄積で備わる「常識」もありません。
先ほどさらっと『環境と相互作用し、報酬を最大化するための行動』と書きましたが、つまり、元々の知識というものが存在しないため、非常に多くのトライアンドエラーを経験させて、そこから得られる報酬に準じて正解を割り出せるようにするということです。
私たちが長い年数をかけて得たような知恵などを習得させるには、その分、学習量をこなさせなくてはいけないし、もちろんその分の時間も必要ということ。
加えてルールが変わればそれに応じて報酬の大きさも変わってしまう為、学習は一貫したルール上でなくては正しい正解が導き出せなくなりますよね。
ですが、先ほども書いたように思考も持ち合わせていない…つまり応用ができないため、似ている分野でも、性能を重視するのであれば新しくいちから学習させ直す必要があるのです。
これらの課題に直面し、近年は報酬として、LLM(大規模言語モデル)に判断させた良し悪しを用いたり、GAIL(Generative Adversarial Imitation Learning)といって人間の熟練者を模倣する学習を組み入れることで、効率的な学習を行えるよう改善を測っています。
自然言語処理(Natural Language Processing, NLP)
AIエージェントの核心技術の一つである自然言語処理(NLP)は、ユーザーとの自然な対話を実現するために不可欠ですが、一方で、多言語対応や業界特化型のNLPは依然として難しい課題とされています。 これは、各言語特有の文法構造や、専門用語や業界固有の知識が多岐にわたるためです。
例えば、法律業界での契約書分析や医療分野での診療記録の解析など、特定の領域におけるNLPの高度化は、膨大なデータと専門知識を反映させる必要があるため、開発が難航しています。
しかし、現在も進行形でこれらの課題を克服するために、より高度な言語モデルの開発や、各分野に特化したデータの収集が進められています。現に私たちのパートナー企業でも多言語対応や、口語などの語句の設定を搭載したシステムなどの開発も行われており、NLPの精度は徐々に上がってきています。
お疲れさまです。
ひとつひとつの文章が長くなりましたが、いかがでしたか?
私たちが期待を抱く『自動化』や『効率化』構想の基盤にある、AI技術は完全ではないということが以前よりもお分かりいただければ幸いです。
では、これらはAIのシステムにどのように影響を与えるのでしょうか?
AIの苦手分野、そして課題
クリエイティブな作業の難しさ
AIは、膨大なデータをもとに学習し、パターンを見つけ出すのが得意ですが、まったく新しい概念やオリジナルのアイデアを創造する能力には限界があります。
人間が行うような小説や音楽の作曲、絵画や彫刻などの芸術的創作は、既存のデータに基づかない「想像力」や「発想力」を必要としますが、これはAIが苦手とする分野です。
というのも、AIは既存のデータから新しい組み合わせを生成することはできますが、感情や経験、直感が密接に関わるような、完全に新しい視点や独自の発想を生み出す創造的な作業はできないからです。
しかし、AIは人間の創造的プロセスを支援するツールとして非常に有効です。
例えば、作家のアイデアを補強する、アーティストの構図を提案するなど、AIと人間が協働することで、創造の幅が広がる可能性があります。
人間の感情理解
AIは、人間の感情を正確に理解することが困難です。
人間の感情は、表情、声のトーン、言葉の選び方、そして状況に応じた微妙なニュアンスで表現されるうえに、これらは文化によっても異なるため、一概にデータ化できない要素が多く含まれます。
つまり、感情の要素をデータとして処理することは可能ですが、感情に伴う背景やその瞬間の状況を解釈するのは難しく、自然なコミュニケーションや共感を伴うやり取りはまだ難しいとされています。
しかし、感情認識の技術は進化しており、表情や声のトーン、言葉遣いを分析し、感情を推測する研究が進んでいます。将来的には、AIが感情をより正確に理解し、それに応じた行動をとることができる日が来るかもしれません。
ノイズデータへの対処
AIは、ノイズの多いデータに対して精度が低下するという課題を抱えています。
ノイズデータとは、不要な情報や誤ったデータのことで、これが学習過程に混入すると、AIの予測や判断が歪められます。
例えば、画像認識においてノイズが含まれている場合、AIはノイズを重要な情報と誤解し、間違った結論を導き出してしまうことがあります。
ノイズデータへの対処はAIの重要な研究課題であり、さまざまな手法が開発されています。たとえば、ノイズデータを除去するための前処理技術や、ノイズデータの存在を考慮し、その影響を軽減するためのロバストな学習モデルの開発が進められています。
AIがノイズに対応する能力を高めることで、より複雑な現実世界の問題に対応できることが期待されています。
AIは、データから学習し、パターンを認識する優れた技術ですが、クリエイティブな作業や人間の感情理解、ノイズデータへの対応にはまだ限界があるということですね。
これらの問題が解決されるには、さらなる技術進化と慎重な運用が必要です。
しかし、これらの限界がある一方で、AIは進化を続けており、現実的な問題を解決する可能性を秘めています。ここでは、技術の進化がもたらす未来と、AIと人間がどのように共存し、共に発展していくのかをご一緒に考察してみましょう。
AIの未来と現実的な可能性
技術の進化と現状の限界
AI技術は急速に進化していますが、全ての課題を解決できるわけではありません。例えば、自動運転技術や医療分野でのAIの活用は、現時点で大きな進展を見せていますが、完全な自動運転や全ての病気を正確に診断できるAIは、まだ実現していません。技術は進化を続けているものの、データの質や量、倫理的な問題など、現実の制約に直面していることを認識する必要があります。
例えば、自動運転技術では、天候や環境が不安定な状況での判断が難しく、完全に安全な自動運転の実現にはさらなる時間が必要です。医療分野でも、AIは特定の診断支援には役立ちますが、すべての医師の判断を置き換えることは難しく、今後も医師との協働が必要と考えられています。
人間との協働が重要な未来
AIが進化する中でも、人間とAIが協力して仕事をする未来が現実的です。AIは、人間の能力を補完し、業務を効率化することに長けていますが、人間の創造性や複雑な判断を完全に代替することは困難です。そのため、AIは人間のサポート役として、データの分析やパターン認識などを担い、人間がより創造的で戦略的な仕事に集中できるような役割を果たします。
例えば、ビジネスの現場では、AIが顧客データを分析し、トレンドやパターンを提供する一方で、最終的な意思決定は人間が行う、という形が理想的な未来像として描かれています。このように、AIと人間が協働することで、企業の競争力を高めることが可能です。
倫理的・社会的課題への対応
AI技術が進化する一方で、倫理的・社会的な課題も浮かび上がっています。AIの活用が進むことで、プライバシーの問題や、AIが人間の仕事を奪う可能性が懸念されています。特に、AIによる自動化が進むことで、特定の業種や職業における労働の機会が減少するという問題は避けられません。
また、AIが学習するデータには、バイアスが含まれている可能性があり、その結果、AIが不公平な判断を行うリスクも存在します。これらの課題に対して、AI技術の開発者や利用者は責任を持ち、透明性のあるAI運用や、公平で倫理的なAIの利用を推進する必要があります。AIの進化に伴って、これらの問題を解決することが、技術の持続可能な発展に不可欠です。
【まとめ】AIの精度における現実──その課題と付き合い方
最後に
AI業界は今後さらに進化し、さまざまな分野で活用が進む一方で、現在の技術的限界や倫理的課題にも目を向けることが重要です。人間とAIの協働を前提とし、現実的な期待を持って活用することが、AIの進化におけるカギとなります。
AIシステムの導入や身近でのAI活用することでの効率化などを成功させるためには、明確な目的と目標設定、適切なデータの収集と整備、適切なAIモデルの選択、専門知識と人材の確保、継続的な評価と改善などが重要です。
AI技術の進化は、私たちに多くの可能性をもたらすと同時に、多くの課題も突き付けています。AI技術を倫理的に、そして社会的に責任を持って開発し、利用していくことが重要です。AIと人間が共生し、共に発展していく未来を目指しましょう。
尚、当社では新規のお客様へも要件定義から携わらせていただき、各企業様のご要望に沿ったシステム開発を行ってまいりました。
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ここまで記事を読んでいただき、ありがとうございました。
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